久保の家
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暮らしのことば

畑で

「あ」(15) 「か」(15) 「さ」(7) 「た」(3) 「な」(6) 「は」(8) 「ま」(4) 「や」(3) 「わ」(2)

おことわり:ことばの解釈や用法、語源などは、あくまでもこのページの管理者が勝手に判断したもので、学術的な根拠に基づくものではありません。


「あ」

「あおじくそ」
末成り(うらなり)や葉の陰で日光に当たらないで育ったため、色着きの悪い野菜や果物のことを呼ぶ。
「あおったれ」
色着きの悪い果物のこと。「あおじくそ」もほぼ同じ意味。
「あがる」
昼や夕方に、畑や田の仕事を切り上げて家に帰ること。
田植えが終わると水田から上がるので、これがもとになったのかな?
農業以外でもあちこちで使われているような気がする。
早めに仕事を終えて引き上げることを「早上がり」といい、まだ仕事をしている近所の人に「おあがりー」と声を掛けて帰る。
「あげざく」
鋤や鍬で畝の作物の根元に土を寄せること。
傾斜地の畑では、等高線に沿って畝を作り、水を流れにくくして作物に水を供給する。
このとき、下から上に土を多く動かし、年々、表土が下に移動するのを防ぐ。このため、真夏のあげざく作業は、厳しい重労働である。
急傾斜地の畑では、表土の流出を防ぐため、縦に畝たてすることがある。土は流れにくいが、水持ちも悪い。
「いがく」
栗の実だけが落ちず、イガごと落ちたイガから栗の実を取り出すこと。
「いしがら」
石が多い様子。 「石がら」
石がガラガラしているからかどうかは不明。
ちなみに山で石がごろごろしている所は「ごーろ」という。
「うまいれ」
畑や田に出入りするための小径。馬を入れるから「馬入れ」と呼んだのか?
人がひとり歩くだけの幅しかなく、一輪車か小型の耕耘機がやっと通れるだけで、自動車もトラクターも通れない。
他人の土地を通らないで自分の土地に入るために「うまいれ」を利用するしかない場合は、農具や資材、農産物をすべて人力で運搬せざるを得ず、機械化を阻害する要因にもなっていた。
「先祖伝来の土地を削られるのは、身を削られるよりもせつない」とか「畑が狭められるのは死活問題だ」などと道路の拡幅に抵抗する人もいたが、最近はようやく農道が整備され、ほとんどの田畑に車が入るようになってきた。
「うむ」
くだものが”熟す”こと。漢字では「熟む」。
「プラムが熟んできたからそろそろ出荷できるかな」
うむ:(「膿む」と同源) 果実が熟する。成熟する。 広辞苑
「ぇえ」(【ぇ】は低く【え】を上げる)
農繁期で手が足りないときに、お互いに労力を提供し合うこと。
同等の労力であることが基本。いわゆる”結い(ゆい)”。
ただし、「ぇえ」の語源が「ゆい」かどうかは、定かでない。
「えける」
”埋ける(いける)”が訛った。
雪が降る前に、畑に穴を掘って大根と白菜を埋けておき、ときどき掘り出して食べる。
「えつける」
”しばりつける”、”とりつける”
「コンフューザーを枝にえつける(取り付ける)」
「えむ」
えんだくりの実 栗のイガが割れ、栗の実が顔を出すこと。収穫のしるし。
「くりがえんできた」(くりのイガが割れてきた)
「えんざ」
くだものの”果柄(くだものの実が枝からぶらさがる茎の部分)”のこと。「ほぞ」というときもある。
収穫時にえんざが取れると、りんごは規格が下がるが、プラムはえんざを取ってからパックに詰める。
「お菜」
狭い意味で”野沢菜”のこと。
”菜っ葉(なっぱ)”全般を「お菜」と呼ぶこともある。
おろぬく
漢字では「疎抜く」。「おろのく」ともいう。
大根の種を蒔き、芽が10センチ位まで伸びたところでおろのいた”おろのきだいこん”は、みそ汁の実や浅漬けにすると美味です。
おろぬく:多くの中から、間を隔てて抜き取る。まびく。うろぬく。また、より出す。取りのける。”間引く” 広辞苑
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「か」

「かっけす」
”ひっくりかえす”こと。
「かっけずる」
タンポポなどの雑草を”草かき”で根本から削り取ること。
”掻き削る(かきけずる)”が訛った。
「かっぱ」
稲や大豆などを刈り取った後の”切り株”のこと。
切ったものの根本の方も「かっぱ」という。先の方は「末(うら)」という。
かっぱの方を持って運ぶ」(根本の方を持って運ぶ)
「がまんど」
”りんご”や”なし”の「芯」のこと。
「がらっぱたけ」
石の多い畑。「がら畑」
「かんます」
トラクターや耕耘機のロータリーで起耕すること。「畑をかんましてから畝(うね)をたてる」
ロータリーの刃が回転することから、「かきまぜる」が転じた。
「ぎゃあぎゃあ」
ムクドリ(椋鳥)のこと。鳴き声から勝手に名前を付けたようだが、けっこう通じている。
収穫直前のりんごをつついて傷物にする害鳥の代表。
ハチは1つの実を食べ尽くすまで取り付いているが、鳥は手(くちばし?)当たり次第つついてすぐ隣に移動するので始末が悪い。
「くじな」
タンポポ(蒲公英)のこと。
「くね」
蔓物野菜を這わせるくね きゅうりなどの蔓(つる)をはわせる棚。
狭い面積で蔓を長く伸ばせ、太陽の光が葉によく当たる。雨が降っても泥はねがかからないので、実が汚れない。
共通語の「くね」とは用途が異なる。
「くれる」
植物に水や肥料を”与える”こと。
「野菜に水をくれる(与える)」
動物に餌を与えるときにも使う。「金魚に餌をくれる(与える)」
「くろ」
漢字は”畔”。田や畑の境界部。
「やっくら」も「くろ」の一部。
「畑のくろにおんとしてみんなでおこびれ食べた」(畑の端に腰を下ろして皆でおやつを食べた)
「けえきりむし」
”カムキリムシ”のこと。
カミキリムシの幼虫がりんごやぶどうの木の中に入り込んでいるのを知らずにいると、木の芯を食い荒らされ、やがて枯れてしまう。
枯れた木を伐って薪にすると幼虫がごろごろ転がり出てくるので、昔は囲炉裏で焼いておやつに食べた。
「こぐ」
大根などを”引き抜く”こと。
小林一茶は「大根引大根で道を教へけり」と詠んでいるので、大根こぎはしなかったのかな?
「こしらえる」
漢字では「拵える」。野菜についている土や、傷ついた葉などを取ってきれいにすること。
「こさえる」「こせえる」「こせる」とも言う。
「こなす」
切り倒した木や枝を適当な長さに切ること。
「薪をこなす」「枝をこなしてぼやをまるける(小枝を束ねる)」
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「さ」

「さくる」
鍬(くわ)や鋤(すき)で畝(うね)たてをすること。
「しいな」
実ができず殻(から)だけの籾(もみ)や、莢(さや)だけの豆のこと。「しいなっぽ」ともいう。
「今年は気温が低く日照不足でしいなが多そうだ。」
しいな:殻ばかりで実のない籾モミ。また、果実の実らないでしなびたもの。しいなし。しいなせ。しいら。しいだ。広辞苑
「じしょ」
漢字では「地所」。
1)土地、田畑のこと。「あの家はいいとこに地所持っている」
2)肥沃で石がなく、日当たりのいい耕作に適した土地を「地所がいい」という。逆に、痩せて石が多く、日当たりが悪くて耕作に苦労する土地を「地所が悪い」という。
「しなくれる」
作物の水分が減少して”萎びる(しなびる)”こと。
更に乾燥の程度が進むと「ひっかすばる(干からびる)」
「せんぞ」
”前栽(せんざい)”が訛った。
せんざい(前栽):前栽物の略。
前栽物:あおもの。野菜。せんざい。広辞苑
「せんぞばたけ」
自家用の野菜などを作る畑のこと。
「そく」
藁などの大きな束を数える単位 ”束”。
「一束(いっつぉく)二束(にそく)三束(さんぞく)」と数える。
腕で抱える程度の量。稲藁は、20把位をまとめて一束にする。
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「た」

「つるばる」
草がほけて(伸びて)足にからみつくこと。
「除草剤を使わねからつるばって困る」と婆ちゃんが怒る。
「てぇまわらね」
忙しくて”手が回らない”こと。また、手不足で今以上に拡大できないときにも使われる。
「とうど」
よその家の農作業などの手伝いをすること。
報酬はお金が普通だが、米の現物や、「ぇえ」にして逆に手伝ってもらうこともある。
とうど:(タヒトの音便) 田打や田植に従事する人。また、日雇い。田子タゴ。 広辞苑
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「な」

「にょお」
草や藁などを積み上げること。
「ねえま」
”苗間(なえま)”が訛った。”苗代”のこと。
一般に”苗代”は水稲の苗を仕立てる場所や設備を指すが、野菜やタバコの苗を育てる所も苗間と呼んでいる。
「ねぶり」
”アブラムシ”のこと。
作物の新芽にびっしりと付着し、養分を吸い取って生育を阻害するだけでなく、ウィルス(植物屋さんはバイラスと呼ぶ)を媒介するので、作物の大敵。
アリはアブラムシの尻から出る密を好み、アブラムシを運ぶので、アリがぞろぞろ列をなしている先には、必ずアブラムシの大群がいる。
「ねんじん」
”ニンジン”が訛った。
「のぼつち」
「のぼ土」。腐植を多く含む黒ボク土のことで、「黒ぼく」とも呼んでいる。
非常に軽く、耕作しやすい。肥持ちがよく、透水性も高いが吸湿性も多い。
「のやすみ」
”農休み(のうやすみ)”が訛った。
農業には休日はないが、農作業が一段落してどしゃぶりの雨が降ったりすると、畑に行かずにお茶でも飲んで農休みをする。
車社会になる前は、農家の家族がまとまって遠出することはできなかったが、村や分館の主催で”農休み”のバス旅行が行われる、それに便乗して観光地にでかけた。
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「は」

「はいも」
里芋の葉の露”里芋(さといも)”のこと。
「はえくち」
蒔いた種の芽の出具合。
肥料や天候の具合で一様に生えないときは「はえくちが悪い」という。
「はさく」
畝と畝の間の低くなったところ。
「はさくいれ」
「はさく」に藁や刈草などを敷き、乾燥を防いだり、草が生えにくくすること。
「ぶつ」
果物や野菜に薬剤を散布することを「ぶつ」という。
「もうダニ剤ぶたったかい」(もうダニ剤を散布なさいましたか)などと使う。
猟銃を撃つことも「ぶつ」というので「うつ」が訛ったものか。
「ふぞろ」
”不揃い(ふぞろい)”のこと。
まいた種の「はえくち」が悪いとふぞろになる。
「ほける」
植物が大きく生長すること。
野菜がほけすぎると養分が実に行かず、味が落ちる。
雨の多い年は雑草がやたらにほけるので、草刈りが大変
「真丸に若草ほける御寺かな」一茶
「ほど」
瓜やミカンの”へた”のこと。「ほぞ」が訛った。
マクワウリはほどが抜けるとちょうど食べごろになった。プリンスメロンも同じだが、商品として出荷するにはほどが抜ける直前に収穫しないと商品価値が落ちた。
ほぞ:(古くは清音。臍ホゾと同源) 瓜や果実のへた。 広辞苑
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「ま」

「まつち」
「松土」と書く。表土の下にある砂質壌土のこと。
粘り気があり、乾くと岩のように硬くなる。
地力は「のぼ土」よりもあるとされている。
「まるけ」
すげでまるけたりんごの枝 野菜や稲わら、薪などの”束”のこと。
束ねることを「まるける」という。
まるけたものは「ひとまるけ」「ふたまるけ」と数える。
山から焚き物を拾ってくるとき、まるけが小さいと、「カラスが巣を取られたと思って追っかけてくるど」とおどかされた。
「みーいる」
1)穀物の実(種)が成熟すること。「実が入る」。「みーいらない」のは「しいな」にしかならない。
「大豆がみーいっちゃって(成熟しちゃって)、枝豆が食べられない」。
2)手足の筋肉を使いすぎて、ぱんぱんに強ばること。
「急な山登ってきたら、あしゃあみーいった」(急な山に登ってきたら、脚の筋肉が疲れて強ばった)
「めしめしごと」
”飯前仕事”が訛ったもの。
朝食前にめしめ仕事してから会社に行く勤め人もいる。
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「や」

「やけっつく」
強い日光に当たって、りんごやぶどうの表面が日焼けすること。「焼け付く」が強まった。
日焼けした果実を「焼けっつり」という。やけっついた部分は腐りやすくなるため、「焼けっつり」は商品にならない。
火傷(やけど)することも「焼けっつく」という。
「やっくら」
やっくらの裾に咲く福寿草 畑で拾った石を集めて山積みしたところ。「やっこら」ともいう。
石がら畑を苦労して耕したご先祖様の苦労が偲ばれる。
語源は石垣などを表す「やつか」から転じたものか。
やつか:(イワツカ(岩塚)の転か)
石垣。また、石堤。 広辞苑
雪が消えるとやっくらの裾に福寿草が群がって咲き出すが、やがて雑草に覆われる。
「よっつく」
畑や田の仕事を終えて家に帰ること。「寄りつく」が変化したものか?
「ひー暮れるまで仕事しているんで、よっつくのが遅い」(日が暮れるまで仕事をしているので、家に帰るのが遅い」

「わ」

「わ」
野菜や藁の束を数える単位 ”把”。手で掴める程度の量。
「一把(いちわ)二把(にわ)三把(さんば)」と数える。
「わかっき」
リンゴやブドウの若木のこと。
植えてから10年〜15年くらいまではまだ半人前の”わかっき”。

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